穴があったら踊りたい

おさかなさんと彼の平凡で特別な日々です。そんな日々をドキュメンタリー映像にしようと目論んでいます。

5年後、10年後も

昨日は彼がとても調子が悪そうだった。

薬が全然効かないと言って、必死に力を抜こうとしていた。

 

彼は薬が効かない時、なるべく仮眠を取るようにする。

そうすると少しだけ充電されて症状が落ち着くからだ。

でも薬が効かなすぎる時は、眠るのも一苦労。

昨日はまさにそんな日だった。

 

私がソファーでブログを書いていると、

布団の中でしんどそうにしている彼が目に入る。

私が何かしたからといって薬が効くわけではないのも知っているけれど、

ブログが全く手につかない私は、とりあえず彼に近づいてみる。

アイマスクをして必死に寝ようと試みている彼に、そっと触れてみる。

 

少し、嬉しそうだ。

 

しんどい時、ハグすると少し落ち着くらしく、

私はしばらく彼にハグをする。

「大丈夫〜大丈夫〜」

彼直伝の「大丈夫になる魔法」とやらを私なりにやってみる。

必死な彼の呼吸が、少しずつ緩やかになって、

5分くらいすると寝息を立て始めた。

 

一度寝てしまうと、私は迂闊に動けなくなる。

そのまま彼が目覚めるまで10分くらいはハグしたままになるのだ。

たまに変な姿勢の状態で寝られると大変だが、

この時間が私は結構好きだ。

 

でも同時に心配な気持ちも湧いてくる。

もしこのまま彼が死んでしまったらどうしよう。

ずっと薬が効かなくてしんどいままだったらどうしよう。

私は、ちゃんと受け止め切れるだろうか。

 

 

10分後、目覚めた彼は少し楽になったようだった。

そして、こう言った。

 

 

「5年後も10年後も、こうしてくれる・・?」

 

 

私は一言、「頑張るね。」と言った。

 

 

「頑張る」って、何をだろう。

私は頑張らないと5年後、10年後、

彼がしんどい時にハグすることもできなくなるのか?

わからなかった。

でもきっと不安なのも事実だった。

このままずっと彼がしんどい状態だったら、

私は大丈夫になる魔法使いとして、ハグし続けられるんだろうか。

 

「こうしたく、させてね」

 

私は付け加えた。

我ながら、他力本願である。

でも本音に近かった。

 

 

私は彼のことを大事に思っている。

今それは紛れもない事実で、私はそう言い切れる。

そして大事な人が苦しんでいる時に、

求められてハグしないでいられるだろうか。

私は今も未来も彼を大事にし続けたい。

そう心から思っているけれど、

どこかで、「大事にするよ、私のことも大事にしてくれたらね」

みたいな気持ちがあるようにも思えた。

 

これは正常なのかもしれない。

パートナーと言っても赤の他人。

見返りを一切求めずに無条件の愛情を注ぎ続けられる人なんて

そうそういないだろう。

そしてそれが唯一の美しいパートナーシップであるとも思わない。

 

ただ、大事にするかどうかは、

そう「決める」ことでもあるんじゃないのかなとも思う。

大事にできたらするんじゃなくて、

大事にすると決めて、大事にする。

彼はいつも私に、そうしてくれているように思う。

大事にできていないならできるようにする。

だって、大事にするって決めたから。

 

彼はそういう人だ。

 

私はできるかわからないことは、「できる」と言いたくないタイプ。

5年、10年先の不確かなことについて、

「安心して!絶対にずーっとハグし続けるからね!!」とは言えなかった。

そう言えたらよかったかって言うと、そうでもないかもしれない。

私は、私なりの誠実さで答えたんだと思う。

でも、

 

大事にすると決めて、大事にする。

 

私はそういう心持ちでいられる人に、

どこかでとても憧れているのかもしれない。

だからこそ彼を、尊敬しているのかもしれないな。 

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「大事って簡単じゃないね」by 彼(頑張ってハグしてる絵を描いてくれた)