メガネさんの失踪
「お財布持った？」
「イヤホンは？」
「鍵〜」
「薬〜」
「スマホ〜」
「メガネは？」
これは私たちのお決まりのやりとりだ。
私たちは徒歩１０分圏内にそれぞれ一人暮らしをしている。
仕事は二人とも在宅なのでそれぞれの家でやっているが、
夜はどちらかの家で二人で過ごすことがほとんど。
彼の家を出て私の家に向かう時は、毎回忘れ物チェックが必須。
昔はよく私の家についてから
「メガネがない〜」とか、
「イヤホン忘れた〜」とか、
「お財布なくした・・！？あ、家に忘れてきたかも・・・。」
「スマホがない・・・あ、あった・・・」
などが定番のハラハラだった。
メガネがないと一緒に映画みたりもできないし、
イヤホンがないと私が寝ている間に彼は音を出せない。
だったらもう家を出る前にちゃんとチェックをしよう。
ということで最近は私が忘れない限りは、
出発前にチェックが入るようになったのだ。
今日もご飯を食べ終わって、
よし私の家に向かおう！としたところ、
マストメンツの「メガネ」さんが見当たらない。
まぁ、またその辺に置いてあるだろうと二人で探し始める。
ソファの横はメガネのよく置いてあるゾーン。
あ、ケース発見！よかった〜。
・・・・・・空っぽだ。
あれ〜、あとはデスクの方かな。
ガサガサ。
彼の家は細々としたものが多い。
特にコード類とかオーディオ関連のものが
そこらじゅうに置いてある。
コード類にカモフラージュされているのか？
んー・・・
ない。
たまに布団に寝転がる時に外すから、
布団の淵に落ちているかも！？
そうだ、きっとそうに違いない。
布団をどかす。
んーーーーーーー・・・ない・・・・。
メガネ・・メガネ・・・・。
ソファーの裏
トイレの中
お風呂の中
シンクの中
しまいには冷蔵庫の中
・・・・ない！！！！！！
だんだん彼も私もイライラしてきます。
お「最後に使ったのどこか覚えてないの？」
彼「・・覚えてない〜〜〜・・」
お「昨日はあったよね？」
彼「昨日は進撃の巨人みてたときかけてたと思う」
昨晩23時頃までの生存確認がとれた。
しかし問題はそこから約20時間は経過しているということだ。
ない。
どこを探しても、ない。
いろんなものをどかしてみたけど、ない。
でも昨日の夜まではあった。
必ずどこかにあるはず。
おもむろにドアを開けて家の外の車椅子の様子を見る彼。
何を目撃したんだ！？という衝撃の表情で玄関に倒れ込む彼。
「・・・・あった・・・・・」
家中探し回って見つからなかったメガネさんは、
なんと車椅子の下にあるポケットのような場所に
無防備に置かれていたのでした・・・。
この一連の流れは結構あるあるなのですが、
今回は難易度高めでした（なんたって、家の外・・！）。
おそらく朝ご飯をコンビニに買いに行った時に、
無意識にめがねを外して下に置いたのではと彼は供述している。
彼といるとよくものを無くしたり、
探し物で時間を使うことがある。
イライラしないかと言われたら嘘になる。
けど、
こんな時、人一倍凹んでいるのは、
彼自身なのだ。
パーキンソン病は薬の副作用で、衝動性や多動性を伴うことがある。
彼の場合も無意識に物をどこかに置いて、
それをそのまま忘れて別のところにいって、
また別のことをして・・・ということが発生し、
ものがどこにあるかわからなくなってしまうのだ。
本人はちゃんとしたいと思っているけど、
気づくとものの場所がわからなくなっているのは、
彼にとっては不本意な状況だし、
私が感じている以上にストレスフルなんだと思う。
もしかしたら自分もそうなっているんじゃないか？
と不安な気持ちもあるらしい。
そうだよね。
私も「え！また！？」ってイライラしちゃうこともあるけど、
きっと彼だって物を失くしたくて失くしてる訳じゃないし、
一番困っているのは彼自身なんだよなぁ・・・。
忘れ物チェックリストを作るだけじゃなくて、
ものが見つけやすい家の中の工夫とか、
見つからない時間をもっと楽しめちゃうアイディアとか、
考えていけたらいいのかな。
これも同棲にむけた課題リストに追加決定！笑
今日は彼が凹んでいるので、今度は私が優しくしてあげる番だな！
