穴があったら踊りたい

おさかなさんと彼の平凡で特別な日々です。そんな日々をドキュメンタリー映像にしようと目論んでいます。

個人と環境とのチューニング

私も彼も今は「事務」の仕事をしている。

 

私は教育の現場に魅力を感じていたし、

今もどこかで感じているけれど、

体力的にも精神的にも持たなくて、

今は無理なく働ける事務方で現場の役に立てるように頑張っている。

事務作業はどちらかというと得意?なのかな。

もしかしたらそんなに得意じゃないのかもしれないけれど、

細かいことをめちゃくちゃ気にするタイプなので、

数値のずれとか、オペレーションエラーをいかになくすかということに

情熱を傾けることができる。

現場にいたときも、事務周りでのミスが教室内で目立っていたので、

それをなくすためにいろんなツールを勝手に開発したりしていたし、

それはとても楽しいことだと感じていた。

 

そんな私の現場での事務活動を買ってくれた上司が、

現場で限界だった私に今の部署への異動の提案をしてくれた。

現場に未練が0かというと嘘になるけれど、

現場のスタッフが細かい事務作業に悩まされることなく、

子供たちと精一杯向き合える環境を作る手伝いをしていると思えば、

事務は事務でもやりがいを持って働けていると思う。

何より職場環境がとてもよく、

私の特性(短所も長所も)を理解してくれる人たちに囲まれているので、

この状況に辿り着くまではなかなか大変だったが、

今となってはなかなか居心地が良い職場なのである。

私はきっと恵まれている。

 

一方、彼は事務が壊滅的に苦手だ。

長時間椅子に座ってデータや文字を扱い続けるのは、苦痛でしかない。

思考があちこちに飛んでいってしまったり、

体がむずむずとしたり、

落ち着いてデータを扱うということにこれほど不向きな人がいるのか?

というくらいだ笑

なので彼に事務作業をやらせたら、

彼は「仕事ができない奴」でしかない。

 

彼はパーキンソン病なので、

「体が動かない」

「手先が震える」

ということに関しては職場の人たちにも困難さが伝わりやすい。

車椅子ユーザーの彼に

階段のある場所に毎日通勤しろとか、

立ち仕事をしろとか、

そんな無理難題を求めてくる人は流石にいない。

困難さが伝わりやすい分、職場側も配慮がしやすいのだ。

 

しかし彼の見えない部分にある

「落ち着きのなさ(体的にも脳内も多動)」

「集中を続けることの困難さ」

「突発的に眠りに落ちてしまう薬の副作用」

こういった困難さはなかなか同僚にも伝わりづらい。

いくら「事務作業が苦手です」「頑張ってもできないんです」と伝えても、

それは「やる気が足りないだけ」と解釈されてしまって、

「もっと工夫して頑張って」となってしまう。

 

一般的に単純で「誰にでもできるだろう」と思える事務作業も、

落ち着いて集中して取り組むことができなければ、

それはもう車椅子ユーザーの彼に立ち仕事をしろと言うのと

同じレベルの無理難題なのだ。

彼は「パーキンソン病」で「車椅子ユーザー」という

表立って目立つハンデがあるため、

見えない部分が余計に伝わりづらくなっている可能性がある。

身体面では十分に配慮しているはずだ、と言う職場側の認識は、

彼の見えない部分の困難を解消し、

彼の本来の力を発揮するために必要な本質的な配慮を

見えづらくしてるのかもしれない。

 

周りに見えづらいものは、実は本人にも見えづらかったりする。

何をどう配慮して貰えば、自分が力を発揮できるのかが

なかなか想像できないのだ。

結果的に、本人もうまく配慮を求めることができなくて、

自分は頑張りが足りないから、もっと頑張らなければいけないと

思い詰めてしまうことになりやすい。

 

私は元々教育学専攻なので、特別支援教育について学んでいた。

現場にいた頃も発達・学習障害を持つ子供たちと関わることが多かった。

正直なところ、彼の抱える見えない部分の困難さは、

ADHDを持つ人たちの困難さととても似ている。

もちろん彼はADHDの診断を受けているわけではないし、

おそらくパーキンソン病で使用している薬の影響が大きい可能性はあるが、

症状や困難さはまさにADHDの人のそれである。

昨日彼にそれとなく

「もうパーキンソン病じゃなくて、

 僕はADHDなんですって言ったほうが職場の人に困り感が伝わりそう」

と言ってみた。

これは彼に診断を下すと言う意味ではなくて、

より配慮を受けやすくし、

よりストレスなく働く工夫を見出すための一手段として言ったまでだ。

(※医者以外の人が勝手に診断をしたり病名を使うのは✖️ですよ!)

 

それを聞いた彼は今日ADHDのセルフチェックをしてみたところ、

見事に全て当てはまるとのこと笑

まぁ、そうでしょうよ!

 

彼は絵を描かせたら長く集中していられる。

人と話すことはとても得意で、人と関わる仕事はきっと得意だ。

びっくりするくらいずっと喋ってることもあるけど、

友達を作るのも得意だし、「人たらし」なくらい。

どんどんいろんなものに興味を持ったり、疑問を抱いたり、

それを話し言葉で発信するのはとても得意だ。

 

でも一人で事務作業をさせたら、壊滅的。

ADHDの人も障害者雇用で職を見つけようとすると、

苦戦することが多いと聞いたことがある。

何故って障害者雇用枠の求人となると

ADHDの人の苦手な「事務職」が圧倒的に多いからだ。

 

今の職場にも「事務」は苦手と明示して入っているが、

結局与えられる業務はほとんどが「事務」。

彼の力を発揮するための工夫や環境が整う前に、

彼のやる気と自己効力感が底を尽きてしまいそう・・。

それだけは全力で避けないといけない・・!!!!

まずは自分をよく知って、

自分がどういう環境なら生き生きと働けるのかを見つける必要がある。

そういった機会がこれまであまりにも乏しすぎたのだ。

 

私が今の職場で居心地が良くなったのは、

私が元々適応能力が高い人間だからではないと思う。

むしろめちゃくちゃ面倒で扱いづらい人材だ。笑

でも環境と周囲の人の理解&サポートのおかげで

なんとか自分の力を発揮できるようになってきた。

【個人】のスキルのおかげで適応したのではなくて、

【環境】とうまいことチューニングされてきたというだけ。

また環境が変わったらまたガクッと崩れる可能性が大きいのだ。

 

そして彼の場合は、そのチューニングの難易度が

いろんな要素のおかげでかなりかなりとーっても高い・・・笑

それでもきっと、

彼にも彼が自分の力を発揮できる方法や環境が必ずあるはず。

それを一緒に見つけていきたいと切実に思います。

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チューニングに影響を与える要素が一周巡って最強説の彼